美女と野獣 [DVD]出版社/メーカー: アイ・ヴィ・シー発売日: 2002/09/25メディア: DVD購入: 1人 クリック: 5回この商品を含むブログ (7件) を見る

表記形式は色々と実験してみて安定させていきます。

<補足作品情報>
 監督:ジャン・コクトー - Wikipedia
 製作:アンドレ・ポールヴェ Andre Paulve
 原作:ルプラン・ド・ボーモン Leprince de Beaumont
 脚本:ジャン・コクトー Jean Cocteau
 撮影:アンリ・アルカン Henri Alekan
 音楽:ジョルジュ・オーリック Georges Auric
 出演:ジャン・マレー Jean Marais
ジョゼット・デイ Josette Day
マルセル・アンドレ Marcer Andr
ミシェル・オークレール Michel Auclair
ミラ・パレリ Mila Parely
 制作年:1946年
 制作国:フランス
 注記:モノクロ カンヌ国際映画祭で音楽賞を取得

 観た。個人的な経験を書けば、初めて劇場に観に行った映画がディズニーの「美女と野獣」だった。その時の印象はポットおばさんが強烈だったことくらいで、話の内容がうろ覚え過ぎたのだけれど、ディズニーのものとは大分アプローチが異なるでしょう。ちなみに、このディズニー版「美女と野獣」を元にミュージカル版が作成されたそうで、「ライオンキング」、「アイーダ」というメガヒット作品に続くディズニーによる演劇プロダクションの第1弾として登場したようです。ブロードウェイで開幕したのが1994年のことで、同年のトニー賞では9部門にノミネート。日本では、劇団四季がディズニーと初めて提携した作品。日本での初演は1995年のことのようです(劇団四季のページ参照)。
 コクトー自身は晩年映画に意欲を注いでいたようですが、この作品でもその情熱の一端が垣間みられました。映像の逆回しやスロー再生などを用いたトリッカージュがそこかしこに見られ、光や風の写し方にも相当のこだわりを見せています。その意味で、1946年という時点で可能な映像技法を色々と実験してみせたものと考えることもできそうです。一見しただけではそのトリックがどのように生み出されたのかわからないようなシークェンスもあって、現在の視点から考えても色々と興味深いです。
 台詞の語らせ方など詩人コクトーらしく非常に情緒的で、韻を踏むような箇所も所々に見られ、リズム感がありました。役者自体は表情や体の動きで演技するというよりも、台詞の語り方で聞かせる部分にウェイトがあったように思います。
 ただ、美女と野獣に限らず、周りを固めるベルの父親や兄、その友達の人物設定が若干希薄なとことは否めませんでした。ベルの姉たちのキャラクターが妙にはっきりしていましたが、主役二人の存在がどこか曖昧なものになってしまっていて、それが獣の方に関してはそれなりに葛藤というものを表象していると捉えることもできますが、ベルの方に対する解釈を困難なものにしている節があります。獣が人間に戻り二人が愛を語るシーンがどこか陳腐化して見えたのは、現代の感覚から眺めてしまったからというだけでは説明できないものがある気がします。
 しかし、この作品の圧巻なところは、ベルに言い寄り続けた若者アヴナンが獣に、獣がアヴナンにそっくりな若者に変身するラストシーンでしょう。それは、ベル自身(それはコクトー自身と言ってもいいのかもしれませんが)の欲望が現実の下に晒されたものと見ることもできるように思います。
 音楽を担当したオーリックはラヴェルとサティに影響を受けたらしいですが、一聴した限りではどの影響がいかなるものだったのかちょっと判断不能でした。何となく管の使い方がラヴェルらしい感じもしましたが、何とも寸とも。