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- 出版社/メーカー: ショウゲート
- 発売日: 2005/11/25
- メディア: DVD
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<補足作品情報>
監督:クシシュトフ・キエシロフスキー
製作:クシシュトフ・キエシロフスキー
マラン・カルミッツ
脚本:クシシュトフ・キエシロフスキー
撮影:スワヴォミール・イジャック
音楽:ズビグニエフ・プレイスネル出演:ジュリエット・ビノシュ
ブノワ・レジャン
エレーヌ・ヴァンサン
フローレンス・ペルネル
シャルロット・ヴェリ
エマニュエル・リヴァ上映時間:99分
製作国:フランス/ポーランド/スイス受賞:ヴェネチア国際映画祭(1993)
金獅子賞 クシシュトフ・キエシロフスキー
女優賞 ジュリエット・ビノシュ
撮影賞 スワヴォミール・イジャック
LA批評家協会賞(1993)
音楽賞 ズビグニエフ・プレイスネル
ゴールデン・グローブ(1993)
外国映画賞 ポーランド
女優賞(ドラマ) ジュリエット・ビノシュ
音楽賞 ズビグニエフ・プレイスネル
セザール賞(1993)
主演女優賞 ジュリエット・ビノシュ
音響賞 William Flageollet
Jean-Claude Laureux
編集賞 Jacques Witta
ずっと観たい観たいと思っていて遂に観た。遅ればせながら名匠キェシロフスキ監督の作品を一つ一つ観ていこうかと思っています。そろそろ、映画をたくさん観る習慣を復活させたいと考えていますが、昨年のように手当たり次第観るのではなく、じっくり吟味していい映画を観るようにしたいと思います。
クシシュトフ・キェシロフスキ - Wikipedia
フランス国旗をモチーフとした三部作「トリコロール」の第一作目。自動車事故で作曲家である夫と娘を同時に失った女性が主人公。夫の書くはずだった欧州統合記念の協奏曲のフレーズが彼女の中で何度も繰り返され、蘇る夫と娘との鮮やかな記憶に苛まされる。彼女を取り囲む「青」も、彼女自身の精神を束縛する。そんな中、夫のパートナーであった男が協奏曲を完成させようとし始め、さらには、夫の愛人であったという女性の存在が明らかとなる。彼女の中で何かが変わり始めるのに、そう時間はかからなかった…。
何と言っても映像が美しい。事故を起こして、ジュリエット・ビノシュ演じるジュリーが病院に収容された後の映像感覚の鋭さ。さらには、それがラストの映像に向けた伏線にもなっている。映像による物語の始まりと終わりの指示、こういう感覚はキェシロフスキならではといったところではなかろうか。色の入れ方、光の入れ方も何とも言えない。特にこの作品では「青」が象徴的に使われているけれど、その挿入の仕方が何ともさりげなく、それでいて重々しい存在感を放っている。さすがは映像の芸術家、天才としか言いようが無い。この映像を観るだけでも一見の価値ありです。
そして、各映画賞で主演女優賞をとったジュリエット・ビノシュが何とも素晴らしい。僕が初めてこの人を見たのは「ショコラ」の中でだったけれど、「彼女の存在を有名にした映画」というだけあって、「ショコラ」にはない気迫と存在感が溢れている。「存在の耐えられない軽さ」よりもすごかったような気がする。彼女は決して「哀しい」という表情を最後まで見せない。どこか作り物めいた笑顔を見せる以外は、まるで能面のように静かな表情をしている。その中にどろどろになった激情が含まれている。彼女は必死になって何かに耐えている。夫の残した様々な痕跡に苛まされ、彼との記憶にうちひしがれそうになりながら、それらから訣別しようと独り戦っている。その彼女が最後に「作品」を完成させ、夫のパートナーの元を訪れたとき、初めてはっきりと涙するのだ。また、夫の愛人だったという女性が夫の子供を宿していることがわかり、その彼女に「許して(pardon)」と言われた時に見せるジュリエット・ビノシュの表情が極めて美しい。
ジュリーと夫のパートナーは、最後まで”vous”で呼び合っている。日本語訳では特に区別していないけれど、この関係は非常に重要ではないかと思う。お互いがお互いを支え合いたい、記憶から解放され、新しい人生を送れるように再生したい。それなのに、どこまでも一線を越えることができない。そして、作品が完成し、今まで寄り添っていた旋律が笛のソロに置き換えられたとき、ジュリーははっきりと決意をその目にたたえ、「青(自由)」の海に沈んでいくのである。ラストで、彼の眼には、ジュリーの後ろ姿がはっきりと映し出される。それは、遂にジュリーが彼のものになったことを暗示しているようにも見える。
そして音楽。作品世界にとって音楽は重要なファクターになっているけれど、そこに必然を持たせるような雰囲気を、プレイスネルの作曲した音楽自体が持っている。全体の構成を壊していない。
とにかくセンスがいい。さらに「トリコロール」の残りの作品を観るのが楽しみ。
ついでに、キェシロフスキの作品コレクションを出しているBittersのページを紹介しておきます。TOP <キェシロフスキ・コレクション
蛇足:どうでもいいけれど、作品の中で”flute”(アクサン省略)が「フルート」と訳されているのは間違いであると思う。どう考えてもリコーダーの音だから、あれは「笛」と訳すべきだったのではなかろうか。日本人が「フルート」と聞いたら横笛を連想するので。
私信:僕の直接の知り合いの方々へ。
もう知ってる人もいますが、ようやっと就職先が決まりました。もし知りたいという奇特な方がいらっしゃったら直接連絡します。