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- 出版社/メーカー: ショウゲート
- 発売日: 2005/11/25
- メディア: DVD
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上映時間:96分
製作国:フランス/ポーランド
初公開年月:1994/11監督:クシシュトフ・キエシロフスキー
製作:マラン・カルミッツ
脚本:クシシュトフ・ピエシェヴィッチ
クシシュトフ・キエシロフスキー
撮影:ピョートル・ソボチンスキー
音楽:ズビグニエフ・プレイスネル出演:イレーヌ・ジャコブ
ジャン=ルイ・トランティニャン
フレデリック・フェデール
ジャン=ピエール・ロリ
サミュエル・ル・ビアン
マリオン・スタレンス受賞履歴:
アカデミー賞(1994年)
監督賞:クシシュトフ・キエシロフスキー
脚本賞:クシシュトフ・キエシロフスキー
クシシュトフ・ピエシェヴィッチ
撮影賞:ピョートル・ソボチンスキーカンヌ国際映画祭(1994年)
パルム・ドール:クシシュトフ・キエシロフスキー全米批評家協会賞(1994年)
外国語映画賞NY批評家協会賞(1994年)
外国映画賞:クシシュトフ・キエシロフスキーLA批評家協会賞(1994年)
外国映画賞ゴールデン・グローブ(1994年)
外国映画賞:フランス=ポーランド=スイス英国アカデミー賞(1994年)
主演女優賞:イレーヌ・ジャコブ
監督賞(デヴィッド・リーン賞):クシシュトフ・キエシロフスキー
脚色賞:クシシュトフ・ピエシェヴィッチ
クシシュトフ・キエシロフスキー
外国語映画賞インディペンデント・スピリット賞(1994年)
外国映画賞 監督:クシシュトフ・キエシロフスキー(フランス=スイス=ポーランド)セザール賞(1994年)
音楽賞:ズビグニエフ・プレイスネル
賞をたくさん取っているから何だということもないのですが、三部作の完結編として相当高い評価を得た作品であることは間違いないでしょう。構成もこれでもかという程こだわられていて、三編の中で最も美しい作品と言えると思います。
主人公である女性は、ある男性を愛しています。その彼の心はどうやら彼女に向いていないようなのですが、彼女はそのことに気付いていません。彼女はある日、赤い首輪をした犬を車で轢いてしまいます。首輪に書かれた情報を頼りに飼い主の元に連れて行きますが、どうにもその飼い主の反応には不可解なところばかり。とりあえず、彼女は単独で犬を病院に連れて行きます。そこから、彼女と飼い主との奇妙な関係が始まります。飼い主は、既に引退をした元判事で、暇な一日を隣人の電話の盗聴に充てています。隣人家族の夫がよく電話をしていると言って、彼は女性にその内容を聞かせます。その男は男の恋人と電話をしているようでした。他人のプライバシーを汚していることに憤った彼女は、隣人の元へと盗聴されていることを告げにいきます。しかし、いざその表向きは平和そうな家族の姿を見た途端、秘密を明かす勇気が出なくなってしまいました。結局彼女は、悶々とした気持ちを抱えながら、元判事の盗聴に付き合うことになってしまう。そんな彼女をたしなめるような発言を繰り返す元判事。しかしその状況も、ある電話を聞いてしまった時から、変わり始める。その電話は、彼女の恋人が別の女と逢い引きの約束をしている電話だったのです。
「赤の愛」のテーマはもちろん「博愛」、そして、「すべてを包む無垢の愛」です。主人公となる女性は、自分の身の回りを取り囲むもの一つ一つを大切にし、人との関係をどこまでも信じています。一方、元判事の老人は、数々の事件を見守ってきたこともあり、また自分自身の事件(昔自分の女を寝取った男を有罪に仕立て上げたこと)を振り返りながら、誰にでも秘密があるということ、それを打ち明けようとすることはただの偽善でしかないことを、女性に説き続けます。他人の人生に「偽善的」に干渉することの危うさ、脆さ。しかし、彼女は最後までその老人の後ろ向きな言葉に屈しませんでした。彼女はどこまでも人間を信じようとし、生命の輝きを求め続けたのです。
彼女の愛している男もまた、判事になろうとしていました。その男の裏切りを知ったとき、彼女の中で人間への信頼がゆらぎそうになります。しかし、そんな彼女を支え続けたのは、三部作の主役たちの中で唯一ビンの老人を助けたという、その「無垢の愛」だったのです(ビンの老人が何のことなのか分からないと思いますが、それは本編を観てご確認下さい)。すれ違うこと、裏切られることがあることを受け入れながら、それでも愛に生きようとしたところに彼女の強さがあり、また、そうした精神がどれだけの人の人生のそこに流れているのか、ということを、キェシロフスキは「非常に控えめに」表現しているように思われてなりません。
言葉にせず、映像的に物事を語る姿勢がどこまでも美しい。書けなくなった万年筆と、新しくプレゼントされた万年筆、という形で新旧判事の運命の交絡を表現したり。
そして、何と言っても、船の転覆のシーンとそれに引き続くラストシーンまでの流れが圧巻です。「青の愛」「白の愛」の登場人物たちのその後までさりげなく語りながら、それぞれの生きていくであろう日常とそれを見つめる目の暗示。
やっぱりこの監督、好きです。