悲情城市 [DVD]

悲情城市 [DVD]

<補足作品情報>

上映時間:159分
製作国:台湾
初公開年月:1990/04


監督:ホウ・シャオシェン
脚本:ウー・ニェンツェン
   チュー・ティエンウェン
撮影:チェン・ホァイエン
音楽:立川直樹
   チャン・ホンイー
出演:トニー・レオン
   シン・シューフェン
   リー・ティエンルー
   チェン・ソンヨン
   カオ・ジエ


受賞履歴:
ヴェネチア国際映画祭(1989年)
 金獅子賞 ホウ・シャオシェン

インディペンデント・スピリット賞(1990年)
 外国映画賞 ホウ・シャオシェン(台湾)

 授業で全部観た。長い映画だったので消化不良に陥る。というか、やっぱり授業とかで映画を観ると集中できない。映画館に大人数で映画を観に行くときと同じ。ただ、授業のいいところはその直後に感想を話し合ったりしないこと。次の授業で討論をするらしいので、その討論が始まる前に書いておかないと書く気が失せそう(我ながら難しい性格)。
 台湾の歴史を背景としているので、粗筋についてはあまり説明しないこととします。とりあえず舞台となっているのは、終戦後から国民党政権ができるまでの4年間。とある街の林家の四兄弟、とりわけ四男の文清をとりまく様々な出来事を中心に話は展開される。台湾について意外に知らないことが多く、ある程度の背景知識が無いと、人物設定も複雑なので一発では理解できない。核となる数人の人物の関係と動向はわかっても、話の核心的な部分、監督の意図まで汲み取るには、細かなところまで読めないといけない。最近の映画の中では極めて難しい半ドキュメンタリー映画であると思う。
 恐らく主人公である文清は聾唖の青年であり、人との会話は全て筆談になる。内容はテロップで示され、これは恐らく伏線として、重要なメッセージの多くはテロップで示されることになる。正に彼の発言を利用したわかりやすい表現。かなりイデオロギカルである。それは、物語の後半で出てくる様々な辞世の言葉でも利用され、文清がそれを伝えて回るところに意味がある。「君は思うままに飛び去ってゆけ 俺も後からいくから 皆一緒だ」などなど。国民的な想いにあふれている。これは個人的な見解でしか無いけれど、文清が聾唖に設定されていたのは、文清を台湾のある種の象徴として表象しようとしたからではないだろうか。台湾の多くの人民は、自ら直接物事を知り、選択するのが困難であった。自ら伝えようとする時には、本当に不器用な表現でしか伝えることができなかった。監督の台湾に対する想いを、文清に仮託したと考えられる。
 中国に復帰したことで生じる様々矛盾が、映画の中で色々な形で描かれている。その一つ一つを監督は、静かでぶれの無い、引いた視点で撮っている。道理も通らない現在に対する憤り。
 話はどんどん不幸な方へと流れていく。それをどこまでも第三者的に追っていく。家族は皆バラバラになっていく。
 しかしそれでも、ある種の日常はどこまでも繰り返されているかのように見えるのだ。言葉も出来事も要らない。リアルなのはある日常だけ。また逆に、そうした日常が壊されないことを切実に願っているようにも見える。


 あまりに重く長い。観る者に相当の負担を強いることは間違いない。それでもなおこの映画はこうした形で撮られる意味があったのだろう。